カリヨンの音の鳴る仕組み

「鐘楼に付属する、音階上に配列された鐘を手動で演奏する」と言っても、実際にどのように音を鳴らしているのかは塔の外からは見えないため、不思議に思われる方も多くいらっしゃいます。謎に包まれた演奏の仕組みを図解しましょう。

こちらは塔の中でも演奏台と鐘の設置部分を拡大した図です。
演奏室に設置されたカリヨンの鍵盤は、エレクトーンの足鍵盤のような太さの木の棒(バトン)でできており、これらがピアノの白鍵黒鍵と全く同じように配列され、それぞれの鍵盤がワイヤで演奏室の上に設置された各々の鐘と接続されています。
鐘は内部に「舌」(clapper)と呼ばれる打つ部分を有し、鍵盤の動きはこの部分とワイヤーで繋がれることによって伝えられます。これによって、複雑でこまかい音型も演奏可能となったのです。「ノートルダムの鐘」のビジュアルの影響か、紐にぶら下がって鳴らしていると思われがちなのですが、全ての紐から紐へと飛び回っていては複雑な演奏はとても不可能です。

最も簡略化した鍵盤と鐘とワイヤーの位置関係の図
(Campanology Textbook by the Guild of Carillonneurs in North Americaより)

ではどうしてこのような形になったのでしょうか?それはカリヨンの建設が最も盛んだった16世紀初頭にかけ隆盛を誇った、毛織物産業の機織機にインスピレーションを得たからと言われています。確かにこの絵を見ると納得します。

picture of carillon playing console in 1612
Luc Rombouts “Singing Bronze” より
1612年のカリヨンの様子