2023年4月8日「フランドルの鐘」演奏会・プログラムノート

「第2回伊丹市ハッセルト市国際姉妹都市提携日記念カリヨン演奏会」で
演奏する楽曲につきまして、現地では紙の印刷プログラムも配布される予定ですが、
デジタルでご覧になりたい方・紙でお持ちになりたくない方のニーズを考慮しまして、
こちらのブログにプログラムノートを掲載することにしました。
併せてご活用いただけますと幸いです。

 

第2回伊丹市ハッセルト市国際姉妹都市提携日記念カリヨン演奏会

プログラム

*本日の演奏会に先立ち、未だに止まぬ戦火を憂い、ウクライナの楽曲を演奏します。
ウクライナの祈り(Молитва за Україну/Prayer for Ukraine)
Mykola Lysenko(1842-1912) 作曲 Iryna Riabchun編曲
1885 年、帝政ロシアによりウクライナ 語禁止令が敷かれた中、詩人 Olexandr Konysky が書いた詞に、1998 年、ソビエト連邦からの独立を果たしたウクライナのプロジェクトとして Mykola Lysenko が作曲した楽曲。現在はウクライナ正教の礼拝の終会の讃美歌として広く歌われ、ウクライナの「精神的な第二の国歌」とも呼ばれている。

本編

第一部 ベルギーと日本の友好

ハッセルトより
Limburg, mijn Vaderland リンブルグわが故郷
Henri Tijssen(1862−1926)作曲 内野三菜子編曲
1909 年、作曲家の Tijssen が、学校教員であった Gerard Krekelberg に作詞を依頼し、成立した曲。1939 年、オランダ側・ベルギー側、それぞれのリンブルグの公式歌となった。


伊丹より
丹波流酛摺唄によるパラフレーズ
丹波流酒造り唄 編曲 辻田 尚子
伊丹は現在の清酒造りの基礎となる「諸白」造り発祥の地でもあり、昔から江戸へ送る「灘の酒」 の重要な生産地の一つであった。その酒造りを支えたのが、丹波から冬の間酒造りにきていた丹波杜氏たち。彼らが厳しい酒造りの作業中に歌った歌は、仕事の士気を高めるだけでなく、複雑な発酵 過程を厳密に時間でコントロールするための、いわば時報としての音楽であった。

 

第二部 カリヨンの文化の本流を求めて


Matthias van den Gheynの作品より
-Prelude (Koen Van Assche編曲)
-Fugue (Karel Keldermans編曲)
-Larghetto (Koen Van Assche編曲)
伝統ある大学都市リューヴァン出身のマティアス・ファン・ゲーンはカリヨン奏者として、作曲者として、楽器の特性を存分に活かした作品を残しており、全カリヨン奏者にとって必須のレパートリー群である。

 

アリオーソと7つの変奏曲H.54 Wq 118/4より テーマと第一変奏
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) 作曲Koen Van Assche編曲

カール・フィリップ・エマヌエル(・バッハ)は音楽家一家のバッハ一族の中で、ヨハン・セバスチャン・バッハが最初の妻との間に設けた次男。音楽としてはテレマンの影響を受けており、生前は父ヨハン・セバスチャンよりも有名だった。活躍した時期はチェンバロからフォルテピアノ、ピアノへと移行する時代にあり、生前はフォルテピアノ演奏の第一人者として知られ、バロックから古典派への架け橋となった。残された数多くの美しい鍵盤楽器の器楽曲の一つである。

 

オーボエと弦楽のための協奏曲ハ短調より 序章
Domenico Cimarosa(1749-1801)作曲Arthur Benjamin/Koen Van Assche編曲

チマローザはロッシーニ以前のオペラ・ブッファ(喜劇)の作曲者として最も知られたイタリアの作曲家。チェンバロ・ソナタとして残された美しいメロディをもとにオーストラリア出身の作曲家アーサー・ベンジャミンがオーボエと弦楽のための協奏曲として編曲した作品は「チマローザのオーボエ協奏曲」としてしばしば演奏される。

 

“Bist du bei mir(あなたがそばにいれば)” BWV508
Johan Sebastian Bach(1685-1750) / Gottfried Heinrich Stölzel (1690-1749) 作曲
Koen Van Assche編曲

1725年に出版された「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」に収録されたアリアで、バッハではなくストルツェルによる作曲であることがわかっている。原曲の歌詞は、命の終わりにあって深い信仰と魂の浄化を歌うものである。

 

管弦楽組曲第3番より アリア BWV1068
J.S.Bach(1685-1750) 作曲Jef Rottiers/Koen Van Assche編曲

「G線上のアリア」としてよく知られている本曲は、本来ニ長調で書かれた管弦楽曲第三番のエアをピアノとヴァイオリンの演奏のためにハ長調に移調されたことで、ヴァイオリンの最低音弦であるG線のみで演奏できるようになったため、こう呼ばれるようになった。CM、映画などで非常によく知られ、今日バッハの作品として知られる曲のうち、最も有名なものの一つである。

「第2回伊丹市ハッセルト市国際姉妹都市提携日記念カリヨン演奏会」

2023年4月8日(土曜日)午後2時より、伊丹「フランドルの鐘」にて、
第2回伊丹市ハッセルト市国際姉妹都市提携日記念カリヨン演奏会 を開催いたします。

伊丹市とハッセルト市の姉妹都市提携は1985年4月5日で、
伊丹駅前のカリヨン「フランドルの鐘」はこの姉妹都市提携を記念してハッセルト市より贈られたものです。

入場無料、どなたにもお聞きいただけます。
オープンエアですのでお子様連れ、ベビーカーの方にも気兼ねなくお楽しみ頂けます。
また、他の人との距離を保てば、マスクなしでの参加も可能です。

当日はよほどの荒天でない限りは開催を予定しております。
皆様のお越しをこころよりお待ち申し上げます。

「フランドルの鐘」30周年記念ウェブ講演会

兵庫県伊丹市のカリヨン「フランドルの鐘」がベルギー・ハッセルト市から贈られて今年で30周年を迎えます。これを記念し、「フランドルの鐘」を軸に、カリヨンと16世紀フランドル地方の文化を広く紹介するイベントをウェブ上にて開催いたします。

第一部では「フランドルの鐘」30年のあゆみを、通常の演奏では見ることの難しい演奏中の塔の内部の演奏映像で振り返り、あわせてハッセルト市とハッセルト市のカリヨンも紹介します。また「フランドルの鐘」の立地する有岡城が実際にあった16世紀から17世紀にかけての時代はまさしくカリヨン が発展した時代でもありましたが、その頃のベルギーがどの様な様子だったか、第二部として周辺の美術、歴史、を含めた文化についての講演を、第三部としてその当時にフランドル地方で実際に演奏されていた歌やバイオリンの曲についても、実演を交えた講演にてご紹介いたします。
貴重な「フランドルの鐘」を軸に、日本とベルギーと、21世紀と16世紀をめぐる時間をお楽しみいただけますと幸いです。

とき:11月8日 日曜 午後2時より

場所:オンライン上、YouTubeにて発信いたします。
URL https://ux.nu/QnKZZ

講演者紹介

カリヨン紹介  カリヨン奏者 内野三菜子
(北米カリヨンギルド正会員)

内野三菜子 プロフィール写真
東京都出身。留学先のトロント大学にてカリヨンに出会う。2013年より伊丹・フランドルの鐘での演奏会に出演。2017年ベルギー大使館「日本ベルギー友好150周年」クロージングセレモニーでアントワープ・聖母マリア聖堂の鍵盤を用いた練習機にてカリヨン実演。小学館「サライ」にカリヨンについての記事を寄稿(https://serai.jp/hobby/154969)。 2019年北米カリヨンギルド認定奏者。

ベルギー文化についての講演 白沢達生(翻訳&音楽ライター)

白沢達生 プロフィール
西洋美術史専攻・雑誌編集・輸入商社勤務をへて独立。仏・伊・英・独・蘭・西語などの翻訳や執筆を手がけてきた一方、美術館企画展に合わせてのCD販売監修も長く担当。古楽関連はじめ欧州発売CD解説の翻訳・執筆多数。ウェブマガジンONTOMO「だから、つい聴きたくなる。」ほかWeb記事も執筆。コストマリー主宰中世イベント、南青山Mandala宮廷音楽ライブ、歴史料理再現「音食紀行」、高音質音楽放送ミュージック
バードなどで話し手としても活動。
Twitter → https://twitter.com/t_shirasawa
Blog → https://tatsuoshirasawa.wordpress.com

フランドル音楽についての講演と実演 坂本卓也

徘徊楽師ギルド_プロファイル写真
それぞれ関西を中心に、中世、ルネサンス、バロック音楽などの演奏活動を行っている。 2020年7月に3名で徘徊楽師ギルドを設立し、社会状況に合わせた演奏スタイルとして、公園、河川敷、美観施設など屋外でのライヴ活動にも力を入れている。